ぐうたら妻とは私のことです。

バリキャリからの転落(天楽)日記

苦手なモノ

わたしの苦手なモノは虫や動物だ。

そしてわたしが好かれてしまうモノ・・・

それは虫や動物だ。

 

まず説明しておこう。

虫はまだいい。苦手な人は多いはず。

問題は動物だ。

今の世の中動物が苦手だなんて

動物園が嫌いだなんて。

なんだかとっても心の冷えきった人・・・

きっとそう思われてしまうだろう。

 

でも決して虫や動物を見下しているのではない。

むしろわたしにとって虫も動物も自分も同じ列に並んでいるのだ。

 

だからこそ動物園に行くのはとても心苦しいのだ。

同じ列に並んでいる人が檻の中に入っているのを見て楽しいわけがない。

屁理屈だけどわたしにはそう見えてしまう。

だから自分の意思を持つようになってからはあまり動物園に行っていない。

人間が苦手なのだから動物だって苦手だっておかしくない。

 

虫においても、もちろん同じ列の人だ。

だから虫だって普通に家に入ってくればなんで入ってきたのか問う。

知らない人が家に入ってきたら「なんですか?」と聞くように。

流石にGには問いかけることはできないが。

Gにおいては不思議と誰より先に察知する事ができる。

ものすごく怖いのにいつだって夫くんより先にわたしが見つけてしまう。

見かけようモノなら1週間くらいはリアルにまぶたに焼きついてる。

 

しかしだ、好かれる。

なぜか集まる。吸い寄せられるように。

 

虫は必ず止まる。ぶつかってくる。くっついてる。

嫌がるから寄ってくるんだよと言われたけど

嫌がらない他の選択肢は見当たらない。

基本的に同じ列の並びなので当然その都度帰ってもらうという手をとっていたが

このアパートはわたしが住んだ中で最も多くの虫が住む家だ。

春・夏・秋・・・つまり1年のほとんどが虫と共にいる。

それはもはや一緒に暮らしていると言ってもいい。

常にいる。

アパートは見たことのない大きな蜘蛛だらけ。

わたしはこのアパートをスパイダーハウスと名付けている。

 

部屋にはあらゆる種類の虫が入ってくる。

気をつけても入る。

1年目は虫を見つけては「あ、ここダメなとこだから」と外へ帰ってもらってた。

2年目はそんな甘い顔を見せているから図に乗ったに違いないと思い

心を鬼にした。

わたしは殺虫鬼と化した。

ここに入ってきたら死んでしまうんだと虫に教えなくてはならない。

しかし自分がやるのは怖い。

と言うことで殺虫マシーンを迎え入れた。

青く輝く発光に吸い寄せられた虫達がビリッという電気と共に召される。

きっとあっという間で痛みも感じないだろう。

心は痛むがここは入ってはいけないと縄張りを示さなくてはならない。

劇的にウチに侵入する虫は減った。

 

ちなみにベランダの蜘蛛の家も少しでもできるたびに撤去した。

ここには家は作れないと分かってもらう為だ。

心なしか減ったように思う。

 

冬はわたしにとってそんな闘いがわずかな間ながら

解放される休戦の季節。

 

今日も海へ行った時のことだ。

夫くんが海へ流木を集めに行くというので

今日は暖かいし、たまには少し着いて行こうと歩いて行った。

海岸手前に散歩道を挟み、松林があるのだが

散歩道と松林の境目にベンチがあった。

普段なら虫がいそうなところなので警戒して座るのだが

今はわたしの休戦の冬。

それでも少し怯えながら座っていると

涅槃もしていないのにどこからか鳩が集まってきた。

四方からパタパタとわたしの少し先に降りたって

8羽ほどの鳩たちがこっちに向かって歩いてくる

 

わたしは砂浜を歩く夫くんを必死に探した

しかし微妙に遠い場所にいる

2m先には年配のご夫婦が散歩をしている。

今ここで大きな声をあげて夫くんを呼ぶには

2つのリスクがある。

1つは単純に恥ずかしい。

2つ目は大声を発することによって大量の鳩がワシャワシャと暴れる可能性がある。

それは非常に怖い。

 

わたしはそっと周りの人に聞こえないくらいの声で無意識に話し出す。

 

「えぇ〜だってエサなんかなんも持ってないよ?」

 

そういったところで鳩はお構いなしにそろりそろりと近づいてくる。

 

怖い。

だって知らないおじさん達が大勢でそろりそろりと近づいてきたって怖いのだから。

わたしにはそんな光景にしか見えない。

 

わたしはただひたすらエサは持っていないと鳩に言い続けた。 

すると鳩も理解したのか全員その場で解散した。

一体彼らの何がそうさせたのだろう。

明らかに目は据わっていて、何かに操られるように淡々と集まり近寄ってきた。

 

そんな恐ろしいホラー映画のワンシーンがわたしの目の前では行われていたが

当然通常の世界では暖かい休日の穏やかな午後の時間が流れていた。

 

夫くんは砂浜から戻ってくると

 

「ぐうたらちゃん、鳩に囲まれてたでしょ」

 

そういってうすら笑った。

なんてことだ。

大好きな妻がホラー映画さながらに鳩に追い詰められていたのに

夫くんはのん気にそれを遠くから笑って見ていたのだ。

 

夫くんいわく

ふと振り返ったらわたしの周りに鳩たちが集まるという謎の光景だったが

またなんかやってる・・・と思って見ていたそう。

 

穏やかな休日だった。